2014年12月30日火曜日

アングン再び ★ ANGGUN / Little Things (2002年)


 アングンの曲で大好きな曲「Little Things」のことを書きかけては、下書きのまま過ぎてしまいました。インドネシアの国民的スターであるアングンは、フランス人のご主人と結婚され今はフランス国籍だそうです。「フレンチポップス」とは?漠然と云えば「フランス語」或いは「フランス人」が歌う曲なのでしょう。アングンはアルバムの中で、フランス語曲もあれば、英語曲もあり、また母国のインドネシア語で歌った曲もあります。

 人々のアイデンティティを考える折に、しばしば私の想いが複雑になるのは、人がある時点で国籍を変えることになったとしても、決して母国と決別したわけではないのだということです。なので、国際的には英語曲が最も伝わりやすくとも、敢えて母国語で歌う人達も多い。いくら世界的名声を得たとしても。そんな人達が好きでもあります。例えばアイルランドを代表する国際的歌姫であるエンヤは母国のゲール語を愛し母国語で歌う。その国々の伝統や歴史の中で培われたものがあり、それらは情操として表現される。世界中が英語曲ばかりになったら面白くもなんともない。わが国もいつの日にか公用語が英語になる日が近づく気配も無きにしも非ず。フランスはフランス語を守って頂きたい。私達も日本語を守りたいものです。異文化を愉しみながら。


 アングンの「Little Things」という曲はデンマーク映画の『しあわせな孤独』のエンディングで流れる曲です。この映画はスサンネ・ビア監督の2002年の作品で、デンマーク映画の革命児の如きラース・フォン・トリアー監督がビヨークを起用した、かの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の影響も強い、所謂「ドグマ映画」と呼ばれる手法を用いたものでもあり、アングンはこの制作に共鳴した様です。この映画『しあわせな孤独』でのもう一人の主役とでもいうべきアングンの歌唱はただただ素晴らしいのです。原題は『Open Hearts』ですがこの邦題がとても好きです。そして同時に考えさせられます。「しあわせ」とは?「孤独」とは?なんだろうと。私個人は共にこれらの言葉に肯定的です。そして、アングンの抑えた歌唱、表現力に共鳴し救われる気がしたものでした。

デンマークを代表する俳優であるマッツ・ミケルセン演じるニルスの人生の転落ぶりが悲しくも生を映し出していると想える映画なのですが、アングンのこのエンディング曲の持つ意味はあまりにも大きいのです。映画のサウンドトラックの醍醐味を想います。重い映画ゆえに、好き嫌いの分かれる作品だと想いますが、古い映画を好む私が2000年代以降に観た中で、とても心に残る映画の一つです。「しあわせ」や「孤独」は私の人生と片時も離れはしない。でもそれが人生なのだと受け入れながら生きています。小さな幸せに気づかないだけで、そおっと傍に居たりする。足元にあり見えないだけなのかもしれない。


 そんな事を考えながら生きています。明るい性格なのですけれど。『しあわせな孤独』の予告編をyoutubeより共有させて頂きます。台詞の言語はデンマーク語です。


2014年12月27日土曜日

今日のフレンチポップス ★ アングン:ANGGUN / Life On Mars (1997年)

 「フレンチ・ポップス愛好館」でのボウイ関連はやはりフレンチ繋がりの記事に特化してのもの。ボウイの数ある名曲の中でも「火星の生活 Life On Mars」はライヴなどでも色んな方がカバーされているのですが、アングンはライヴのみならず、1997年のアルバム『アングン』にも収録しています。ボウイの曲の中でもとても好きな曲だそうです。アングンはインドネシアの大スターで、子供の頃から歌っている天性の歌声の持ち主。今はフランスを拠点に活動されています。のびやかでハートフルな歌声に心を打たれます。


 アングンのオリジナル曲で、とびっきり大好きな曲の事を続けたいと思うのですが、先ずはボウイの名曲カバーの「火星の生活 Life On Mars」を先に♪

2014年12月26日金曜日

今日のデヴィッド・ボウイ ★ DAVID BOWIE / Life On Mars (1971年)

 大好きな秋は過ぎゆき白い冬の季節。間もなく今年も終わろうとしている年の瀬の更新です。「今日のデヴィッド・ボウイ」は1971年のアルバム『ハンキー・ドリー』 に収録の「火星の生活」です。『ハンキー・ドリー』はボウイのアルバムの中でも一等好きです(どれも好きなのですが)。ボウイの髪が最も長い頃で、70年代初頭の雰囲気に包まれたボウイ流のフォーキーな調べとSF世界との融合感がボウイならではの幽玄美でもあります。この青白い麗しきボウイのお姿、このさり気ないポーズも何か意味があるのではないだろうか、と考察へと向かわせるのも(ただの深読みであり思い込みだとしても)、表現者ボウイならでは!



 
 Youtubeをまめにチェックしないもので新鮮な発見が多く、このライヴ映像も最近見つけました。この1999年頃の髪型もボウイ史に於いては珍しいスタイルです。勿論大好きです。ファンの方々はすっかりお馴染みなのでしょうけれど、こうしたズレた感覚を愉しみながら生きているとも云えそうです。

DAVID BOWIE / Life On Mars

2014年9月27日土曜日

今日のフレンチポップス ★ ジャック・デュトロン&エティエンヌ・ダオー:JACQUES DUTRONC et ETIENNE DAHO / Tous Les Gouts Sont Dans Ma Nature

秋の足音が聞こえてくる季節になりました。夏や海が好きな方々に、或る種の羨望のような気持ちを子供の頃から抱いて来たような気がします。毎年、苦手な夏をなんとか乗り切ることはまったく些細な個人的課題の一つなのですが、今年はここ数年に比べると随分過ごしやすい夏でした。世界中で、そして国内でも色んなことが起きていますが...。

 

またもや久しぶりの更新となってしまいましたが、作業の片手間にちょこっと「今日のフレンチ・ポップス」を。かっこいい!ジャック・デュトロンの1995年のアルバム『BREVES RECONTRES』に収録の曲「Tous Les Gouts Sont Dans Ma Nature」をなんとなく。この曲はエティエンヌ・ダオーとのデュエット曲であり、どちらも大好きなアーティストです。youtubeよりライヴを掲載させて頂きます。




2014年9月2日火曜日

今日のフレンチポップス ★ シルヴィー・ヴァルタン:SYLVIE VARTAN / La Plus Belle Pour Aller Danser (1963年)

 アリデイとのデュエット曲の数々も素敵なシルヴィー・ヴァルタンですが、やはりこの曲「アイドルを探せ La Plus Belle Pour Aller Danser」。1963年のミシェル・ボワロン監督の映画『アイドルを探せ』の主題歌でもあります。今はDVDにもなりましたが、シルヴィー・ヴァルタンの動くお姿を拝見したくてLDを購入したのが最初でした。その後、リバイバルで新たにビデオを購入。よくシルヴィーの主演作のようにも言われますが、主演ではなく“アイドルたち”の一人として実名で出演し、同名タイトル曲の「アイドルを探せ」を舞台で歌っています(僅かに台詞もあります)。最初の方に出演されるだけですが、まだ19歳頃のシルヴィーが可憐で心ときめきます。


 当時、この曲は日本でも大ヒットしたそうです。戦後の焼け野原からGHQの占領時代が終わり(実は続いているような奇妙な状況ですが)、わが国が復興してゆく時代です。時代への憧憬と複雑な想いがあるのですが、先人方の努力の賜物と感謝いたします。戦後という意識もなく育った泰平の新人類世代の私は、シングル盤ではシルヴィー・ヴァルタンのものを最も多く持っています。アルバムで聴ける曲が多いのですがレコード・ジャケットが好きなもので。かなり散財し今に至りますが後悔どころか、それらは今でもなにかしらの心の栄養、糧となっていると思います。功罪あれど、ポジティヴ・シンキングな性格です。


 ちょっと映画のことも。この映画『アイドルを探せ』はコメディで、おキャンでキュートなダニー・サヴァルたち女性3人と、頼りないけれどモテるリシャール役のフランク・フェルナンデルの4人の珍騒動。女優のミレーヌ・ドモンジョが本人役で登場していて、彼女のダイアモンドを盗んでしまうリシャール。逃げる時に、レコード&楽器店の売り物のギターの中にガムに包んで隠しておいた。しかし、翌日にはそのギターは売り切れてしまい、それも5本あった同じプレスリー型のエリクソン。大慌てでその購入者を追う彼ら。その購入者5人とは、シルヴィー・ヴァルタン、フランク・アラモ、ナンシー・ホロウェイ、ジョニー・アリデイ、シャルル・アズナヴールです。


 彼らは全て本人役で出演していて歌も披露。その他、レ・ザーフやソフィー、エディ・ミッチェル、ジャン=ジャック・ドゥブーも実名で出演しています。ソフィーの上手なダンスも拝見できるので、フレンチポップス・ファン、殊に60年代のイエイエ・ファンには喜ばしいのではないでしょうか。私はシルヴィーとアリデイの登場シーン(タイトなスーツ姿がカッコいい!)、最後に登場するアズナヴールの「想い出の瞳」が聴けるので大満足でした。

 シルヴィーが歌う主題歌「アイドルを探せ」の作詞はシャルル・アズナヴールによるものです。この映画のために書かれたものなのでしょう。“今夜、踊りに行くために 美しく着飾って~”と、夢みる乙女ごころの歌。1964年のアルバム『A Nashville』に収録され日本でも発売されました。また、監督のミシェル・ボワロンというと、ジョニー・アリディの他、アラン・ドロンやブリジット・バルドーのお姿が浮かび、頬が緩みます。

2014年9月1日月曜日

今日のフレンチポップス ★ ジョニー・アリデイ:JOHNNY HALLYDAY / Noir C'est Noir (1966年)

 「ジョニー」といえば今の日本では(世界的に)ジョニー・デップだろうけれど、私はどうしてもジョニー・アリデイとなる。当時を知らない後追い世代ながら何故だか。10代で登場した衝撃的アイドルのアリデイを語らずして、フレンチ・ポップスもイエイエ(yeye)も始まらない。ジョニー・アリデイの本名はジャン=フィリップ・スメ(Jean-Philippe Smet)で1943年6月15日生まれ。1960年に音楽デビュー(50年代末から活動)。ロックの王者といえばローリング・ストーンズなのですが、アリデイの方がデビューは先で大病も克服し、2014年の今年もツアーが予定されている現役です。もう50年以上もの間ずっとスター。それもスーパースター!もうアリデイもシルヴィーもストーンズもボウイも...みんな凄いです!映画にもお若い頃から出演されていて、最近の年老いてからの風貌も独特の雰囲気で、昨今はハードボイルドな役柄も渋いかぎり。楽曲も切ないバラード曲などたまらないものが多数あります。


 アリデイの代表曲に大好きな曲は幾つもありますが、やはりこの「Noir C'est Noir」はモッド・テイストなカッコよさで大好きです。この曲はスペインのロス・ブラボーズ(LOS BRAVOS)という5人組バンドの1966年のヒット曲。モッズ(MODS)ナンバーなので英国でも大ヒットしたそうです。世界的なこのヒット曲を同じ1966年にジョニー・アリデイはフランス語でカバーされている。ロス・ブラボーズの原曲よりもジョニーの方がテンポが早く、やはりお声の力が違う。ロス・ブラボーズのファンの方には失礼なことですがまったくの私見です。

 フランスの音楽を好きだと認識して色々聴いてゆくなかで、驚く程に多様なスタイルがあることを知り今も学びは続いています。20代の頃にジョニー・アリデイよりも先にジャック・デュトロンに夢中になりました。大好きなフランソワーズ・アルディのご主人でもあること、大好きなセルジュ・ゲンスブールがプロデュースしたアルバムがあることを知ったりして。そして、アリデイはシルヴィー・ヴァルタンとご夫婦であった時期があり(凄かったことでしょう!スーパーアイドル同士のカップルだったのですから)、シルヴィーの軌跡を追うなかで、次第にアリデイの存在の大きさに気づき始めたようなのです。この年1966年にはアリデイの自殺未遂という事件もあったそうです。アイドルやスターで在り続ける人たちって大変だろうと凡人の私なりに想像します。それでも、紆余曲折あれども、第一線で活躍し続ける人達がいる。音楽に限らず、そんな人達が好きなのです。老いの美学かな。

Johnny Hallyday - Noir C'est Noir


2014年8月31日日曜日

ボウイで知ったブレルの名曲「アムステルダム」 ★ ジャック・ブレル:JACQUES BREL / Amsterdam (1964年)

 「アムステルダム」というジャック・ブレルの曲をデヴィッド・ボウイ経由で知った私は、“ボウイが好きなブレルって?”と我流の探求が始まったのです。私の10代の頃はネットもないので、所謂「シャンソン」の調べものをする時、先ずは身近にいる母に尋ねてみるのでした。ボウイに夢中になり始め、レコードが好きになってゆくなか、毎月のお小遣いとお弁当を週に一度はパン代に変えてもらい、その一部などを貯めては、“来月はどのレコードを買おうかなあ”と、夢いっぱいだったものです。

 フランソワーズ・アルディやブリジット・フォンテーヌが好きになってからは、ますます聴きたい音楽(レコード)の候補が増える一方でした。そんな頃、ブレルのレコードは、エディット・ピアフやイヴ・モンタンなどのシャンソン、淡谷のり子や渡辺はま子などの日本の古いレコードたちが、わが家のかなり年季の入った家具調のオーディオと一体化したような棚に並んでいました。今から思うとあの居間に佇むアンティークな風情を懐かしく回顧します。両親は特にコレクターでもなかったのですが、知ってるシャンソンに纏わるお話をしてくれました。正直なところ、ニュー・ウェイヴっ子の私には、何となく時代や世代のギャップのようなものを感じ、暫くそれらのレコードを自ら聴くことはありませんでした。


 ブレルのカバー曲を最初に知ったのはサンディ・ショウのベスト盤だったのですが、ボウイがブレルのカバーをしていると知った後は、次第に私自身もブレルのレコードを見つけては買うようになってゆきました。それも、家にあったブレルのレコードに「アムステルダム」は収録されていなかったので、ボウイがカバーした本家本元のブレルが歌う「アムステルダム」を聴くことができたのは数年後のことでした。そんな思春期の音楽との出会いからして時間軸の交錯するものだったこともあり、英国のアート・ロックやプログレ、インディペンデントのニュー・ウェイヴを聴きながら、フレンチ・ポップスやさらに古いシャンソンなどを並行して聴くリスナーとなったようです。それは学びでもあり今も続いています。

 ジャック・ブレルの「Amsterdam アムステルダム」は1964年の『OLYMPIA 64』に収録されていて、シングル盤で1973年にも発売されています。奇しくもボウイが「アムステルダム」をカバー曲としてシングルで発売した年と同じです。摩訶不思議なようですが、偶然とは必然でもあります。ブレルが好きですが、まだまだ私には存在が大きすぎてもっともっと聴き続けたいです。いつか「ブレルが大好きです」と云える日が来ると光栄に思います。そんなブレルの素晴らしい歌唱をライヴ映像と共に。こうした音楽の愉しみ方が今は手軽に出来ます。でも、探していた曲やアルバムと、何年か後にようやく出会えた時の胸躍る、あの気持ちは言葉を超えたものとしてずっと心に刻まれています。そんな音楽との出会いは、時には待つことも喜びになるのだと思えます。



2014年8月30日土曜日

今日のデヴィッド・ボウイ ★ DAVID BOWIE / Amsterdam - Jacques Brel Song (1973年)

 デヴィッド・ボウイが大好きだと語っていたリオちゃんでしたので今日はボウイ。ボウイとフレンチ繋がりというとジャック・ブレルです。ボウイはブレルのファンで1973年にはシングル曲「Sorrow」とのカップリングで「Amsterdam」をリリースしています。スコット・ウォーカーがブレルのカバーをしていたので、少年時代のボウイはたいそう影響を受けているようです。そして、ボウイがブレルのカバーをすることでマーク・アーモンドなどへとブレルの優れた歌が継承されてゆく美しき時の流れを想います。


初めて聴いたボウイのブレル・カバーはこの「アムステルダム」で、『BOWIE RARE』というアルバムがリリースされる事を知り、予約してどんなアルバムなんだろう~とわくわくしながら待っていたものでした。まだボウイのアルバムも数枚しか聴いたことがなかった10代の頃のこと。年月を経ても、あの時、あの頃の風景が蘇るのです。ボウイや愛しき音楽たちは私の人生の大切な時の時です。



2014年8月29日金曜日

今日のフレンチポップス ★ リオ:LIO / J'obtiens Toujours Tout Ce Que Je Veux (1980年)

 リオ(LIO)が1980年にリリースした1stアルバム『LIO(美少女リオ)』に収録の「J'obtiens Toujours Tout Ce Que Je Veux(邦題:みんな欲しいの)」という曲。この頃のリオちゃんは17歳頃でしょうか、白いドレスに髪にはおリボン。ぴょんぴょん飛び跳ねて、兎にも角にもかわいいです。私の場合、女の子に滅法甘いので色んなかわいらしさを愛でる訳ですが、リオちゃんの場合はやはりパンク・ロリータです。ちょっと危うくて刺戟的。でも晴朗たるポップ・アイコンから逸れることはない。フレンチ・ポップ界に於いて異端なアイドル、ナンバー・ワン!
 
 リオはポルトガル生まれのベルギー育ち。70年代末にフランスより先にベルギーでデビューしていて、今やベテランの域に突入しているお方で女優としても活躍されています。フレンチ・ポップスのアイドルというと、シルヴィー・ヴァルタン、ジョニー・アリデイ、フランス・ギャル、フランソワーズ・アルディ、ジャック・デュトロン、シェイラ、ジェーン・バーキン...と、みんな60代後半~70歳を超えた大ベテランという世代で、日本では団塊世代とか全共闘世代などと呼ばれる世代です。ポスト団塊よりさらに後の世代のリオやエティエンヌ・ダオー、エリ・メデイロスやジャクノ(エリ&ジャクノ)、レ・リタ・ミツコ、ジャンヌ・マス、ミレーヌ・ファルメール、パトリシア・カース、ヴァネッサ・パラディ、シャルロット・ゲンズブール...といった80年代に登場したフレンチポップスのアーティスト達には、どうしても同時代性としての理屈を超えたシンパシーのようなものが、また、先輩世代に対する憧憬のようなものもずっとあります。映画やファッションなどは60年代後半から70年代前半の雰囲気がとても好きなので、80年代音楽は私にとって特別な気がします。なので、いつまでも“リオちゃん”であり続けるようです。


2014年7月23日水曜日

今日のフレンチポップス ★ ゲシュ・パティ: GUESCH PATTI / Let Be Must The Queen (1988年)

ゲシュ・パティのこの作品はレコードでジャケ買いしたものの一枚で思い入れも強いです。フランス盤でした。1988年...今から想うとそろそろ日本のバブルの終焉が近づいていた頃でした。当時の私はそんな日本が世界で一番だとか、嘘っぽい気がしていたものです。なぜでしょう...あまりにも表象的な騒音が活気でもあり、また精神の伴わない荒廃のような。お金や物質的には豊かになれど心は貧相になっているような気が漠然とありました。音楽関係のお仕事をずっとしているのですが、あの頃はただ毎日忙しく信じらない程、月に250時間程の勤務の時も。だからと云って上司の方々のような優雅な毎日でも無く、先輩と後輩の間で右往左往していました。でも、好きなお仕事に携わっている日々を私なりに愉しんでいたとも想います。最も痩せ細っていた時期もこの頃かもしれない。あまり体重が落ちすぎると病院に行く頻度が増えるので今もダイエットはしない、どちらかというと反ダイエット派ですが、それは人其々ですね。




 さて、このジャケットになぜ惹きつけられたのだろう、と振り返ってみると、直観的に、真っ白なチュチュ、真っ赤なトゥ・シューズで身を纏いながらも、邪悪で滑稽なデカダンを感じたからかも。音楽より先に映画の魅力に惹かれていた幼き頃、テレビで観た映画の『赤い靴』の衝撃は子供心に強烈な美と恐怖を感じたものでした。バレエを好きになったのも、すべての根源はあの映像にあるようです。
 
 ゲシュ・パティは特異な存在で、シャンソンという古い伝統を継承しながらも破壊的な革新さを伴う。優美であり、かつ猥雑さをも伴う耽美な世界。退廃もまた美であると思うのですが、私の苦手なグロテスクな嫌悪するものでもなく、そんな微妙な危ういバランス感覚が好きです。
 
 9歳の頃からクラシック・バレエを始めダンサーとして舞台出演していたという。表現者としての歌い手が好きなので、そのようなアーティストはただ歌唱力があるだけではつまらない。ゲシュ・パティがダンサーからシンガーへの道へ本格的に歩み始めるきっかけは、声がでなくなってしまった事によるそうです。治療の末、声が出るようになった折、すっかり元よりも太い声に変っていたのだと。その事実に屈せず、個性へと昇華することの出来る強靭な精神に慄きます。ゲシュ・パティはミック・ジャガーの大ファンでもあるそうですが、ゲシュ・パティを称し、“フランスのニナ・ハーゲン!”と当時なにかの雑誌で書かれていました。この日本盤の解説によると、本国フランスでは“エディット・ピアフとティナ・ターナーの競演!”と評されたりしていたそうです。

彼女はサッフォーより過激であり、フランソワーズ・アルディよりもロマンティックで、ブリジット・フォンテーヌよりも大きな宇宙を感じさせるだろうし、かつてのジャック・ブレルやエディット・ピアフを讃えつつも、フランスの持つ音楽イメージを崩壊させるために生まれた革命児とさえ言えるのではないだろうか。

 このように、山田道成氏も絶賛されております。私の好きなお方ばかりのお名前が登場し嬉しいです。“80年代的な”独特の雰囲気があります。パンク、ニュー・ウェイヴを経ての時代。それらの空気が今でもやはり好きな私には、ゲシュ・パティは麗しきデカダン(デカダンス)を纏ったお方に想えます。
 
 アルバム『LABYRINTHE(愛の迷宮)』の1曲目に収録されている「Let be must the queen」は、ゲシュ・パティによる作詞で、どうやら女装したゲイのダンサーのことのようです。素敵なPVです。この当時のツアー・コンセプトには、ジャック・ブレル、イギー・ポップ、ミハイル・バリニシコフの世界があったというのも納得です。コスチューム・デザインや舞台演出まで手掛ける才女でもあります。




Guesch Patti "Let be must the queen" - Labyrinthe (1988)




2014年7月17日木曜日

フレンチ・ポップスとの最初の出会い ★ フランソワーズ・アルディ / もう森へなんか行かない (1968年)

 不意にやってくる修行という名の学び。詳しい事は追々ながら、今日から大好きな「フレンチ・ポップス」を軸にしたブログを開始することにしました。思えば長い友でもあり、「フレンチ・ポップス」を語ることは自分史にも繋がる年齢になりました。まだ旅路の途中なので大いなる音楽との人生は続く。

 私が初めて「フレンチ・ポップス」を意識したお方はフランソワーズ・アルディ。不思議な音楽との邂逅を想う。16歳だったあの日は遠いようでなぜだかいつまでも近い。夢見る頃を過ぎても...。

 フレンチ・ポップスの誰もが認める大名曲や隠れた名曲、アルバムなどを勝手気ままに綴ってゆきたいと思います。久しぶりに聴くと、常に新たな再発見の連続です。

 1968年という年のフランスは五月革命がどうしても浮かぶ。大好きなフランソワーズ・アルディの好きな曲はいっぱい。けれど、最初に買ったアルディのレコードは色褪せることはない。嘗ての洋楽の日本盤(国内盤)は邦題が様々と付けられていて素敵だった。最近はそのままカタカナにした曲が多くなってしまったようで寂しい気もしている。アルディがご自身のイポポタンというレーベルを設立して発売し始めた最初のアルバムの中の曲、「もう森へなんか行かない」。

 日本ではドラマ「沿線地図」の主題歌にもなり、その時に発売されたシングルも購入した。1968年のアルディは24歳か25歳頃。アルデイはこの歌の中で幾度も“私の青春は行ってしまう”と歌う。アルディの心を歌う世界は奮い立たせるようなもの、刺激を求めることもあるけれど、いつも自然にすんなりと私の心にいてくださる。なので、安堵する。好きな曲の多くは淋しげで孤独。けれどいつも美しい。その孤独の影の美しさに心打たれる。私の好きな美しきものたちはリンクし合う。

 フレンチ・ポップスとの最初の出会いであるフランソワーズ・アルディの、1968年の代表曲「もう森へなんか行かない(MaジュネスFoutのル·キャンプ)」です。シャンソン·フランセーズの大名曲ですね。


「もう森へなんか行かない」

私の青春は行ってしまう
詩に沿って
韻から韻へ
腕をぶらぶらさせて
私の青春は行ってしまう
かれた泉の方へ
柳を切る人達が
私の20才を刈り取る

······

私の青春は行ってしまう
ギターの調べにのって
それは私自身から抜け出て行きましました
静かに
私の青春は行ってしまう
それは、錨を切って漂流しましました
それは、髪に
私の20才の花をさしている

······

私達はもう森へなんか行かない
私達はもう一緒に行かない
私の青春は行ってしまう
あなたの足どりのように
あなたが知っていたら
それがどんなにあなたに似ているか
でもあなたはそんな事は知らない
でもあなたはそんな事は知らない




レコード&CD棚 ★ シャンソン・フレンチポップス人名A to Z

レコード&CD棚 ★ シャンソン・フレンチポップス人名A to Z

★個人的に作品として鑑賞している、フランス語で歌っている作品、あるいはフランス語圏のアーティスト(歌のないイージーリスニングなどの音楽家も含んでいます)をメモを兼ねて列挙しております。約1万以上のレコード&CDを所有しているのですが、聴き込めていない作品も多いです。忘れてしまっている曲も多いので再聴しながら、まだ載せていないアーティストも追々にこのリストと記事などで更新してゆきたいと思います。

【A】
Air
Alain Barriere
Alain Bashung
Alain Chamfort
Alain Delon
Alain Souchon
Alan Stivell
Albert Camus
Alexandra Winisky
Alexis HK
Alfred Panou
Alice Dona
Alizee
Allain Leprest
Amelie Morin
Amina
Ana Torroja
Anais
Andre Claveau
Andre Popp
Ange
Anggun
Ann Krist
Anna Karina
Anna Prucnal
Anne Pigalle
Anne Sylvestre
Anne Vanderlove
Annie Cordy
Annie Girardot
Annie Philippe
Anny Gould
Anouk
Anouk Plany
Antoine
Antoine Tome
Areski Belkacem
Arielle
Arielle Dombasle
Arletty
Armande Altai
Arno
Arthur H
Atlantique
Atoll
Aude
Autour De Lucie
Axel Bauer
Axelle Red
Axelle Renoir

【B】
Bambou
Barbara
Baris Manco
Beatrice Arnac
Benjamin Biolay
Berthe Sylva
Bertolt Brecht
Bertrand Burgalat
Betty Mars
Bia
Bien
Big Mini
Blues Trottoir
Bob Sinclar
Boby Lapointe
Bony Bikaye
Boris Vian
Bourvil
Brigitte Bardot
Brigitte Fontaine
Buzy

【C】
Camille
Caravelli
Carla Bruni
Carole Laure
Caroline Loeb
Castafiore Bazooka
Caterina Valente
Catherine Demongeot
Catherine Deneuve
Catherine Fontaine
Catherine Lara
Catherine Ribeiro
Catherine Ribeiro + 2Bis
Catherine Ribeiro + Alpes
Catherine Sauvage
Catherine Spaak
Cathy Claret
Celine Dion
Chelsea
Chagrin D'Amour
Chantal Goya
Chantal Kelly
Chantal Renaud
Charles Aznavour
Charles Baudelaire
Charles Trenet
Charlotte Gainsbourg
Charlotte Rampling
Christine Lebail
Christine Legrand
Christophe
Claire Chevalier
Claire Perdigon
Clara Morgane
Clarika
Claude Bolling
Claude Ciari
Claude Francois
Claude Michel Schonberg
Claude Nougaro
Claudine Longet
Clemence
Clemence Lhomme
Clementine
Cleo
Clothilde
Colette
Colette Magny
Cora Vaucaire
Coralie Clement
Cortex
Czerkinsky

【D】
Daft Punk
Dalida
Damia
Dani
Daniel Balavoine
Daniele Vidal
Daniele Mille
Danielle Darrieux
Dany Brillant
Dave
David Alexandre Winter
David Mcneil
Debit De Chansons
Desireless
Deux
Diane Dufresne
Dianne Tell
Dimitri From Paris
Dolly
Dominique A
Dominique Barouh
Dominique Dalcan
Dominique Walter
Dragibus

【E】
Eddy Mitchell
Edith Piaf
Eileen
Elisa Point
Elisabeth Anais
Elli & Jacno
Elli Medeiros
Elodie Frege
Elsa
Elsa Leroy
Emmanuel Booz
Emmanuelle
Emilie Simon
Enrico Macias
Enzo Enzo
Eric Robrecht
Etienne Charry
Etienne Daho
EVA
Eva

【F】
Felix Leclerc
France Cartigny
France Gall
Francesca Solleville
Francis Cabrel
Francis Lai
Francis Lemarque
Franck Pourcel
Francois Deguelt
Francois Valery
Francoise Hardy
Francoise Kucheida
Francois Wertheimer
Francoiz Breut
Frederic Francois
Frehel
Frida Boccara
Fugu

【G】
Georges Brassens
Georges Moustaki
Gerard Manset
Germaine Montero
Gigliola Cinquetti
Gilbert Becaud
Gilbert Lafaille
Gilbert Montagne
Gillian Hills
Gipsy Kings
Gloria Lasso
Grande Magique Circus
Grande Sophie
Guesch Patti
Guy Marchand

【H】
Hector Zazou
Helena Noguerra
Helene Martin
Helene Segara
Herve Vilard
Henri Salvador
Herbert Leonardr
Hugues Aufray
Hugo

【I】
Ici Paris
Ignatus
Indochine
Isabelle
Isabelle Adjani
Isabelle Antena
Isabelle Aubret
Isabelle Boulay

【J】
Jacno
Jacqueline Boyer
Jacqueline Danno
Jacqueline Dulac
Jacqueline Francois
Jacqueline Taieb
Jacques Brel
Jacques Canetti
Jacques Dutronc
Jacques Higelin
Jacques Prevert
Jad Wio
Jane Birkin
Jean Bart
Jean Bonal
Jean-Claude Vannier
Jean Cocteau
Jean Ferrat
Jean Gabin
Jean Genet
Jean-Jacques Debout
Jean-Jacques Goldman
Jean-Jacques Perry
Jean-Louis Aubert
Jean-Louis Murat
Jean-Michel Jarre
Jean-Paul Sartre
Jean-Roger Caussimon
Jeane Manson
Jeanette
Jeanne-Marie Sens
Jeanne Mas
Jeanne Moreau
Jenifer
Jil Caplan
Jo Lemaire
Joanna Shimkus
Jocelyne
Joe Dassin
Joelle Ursull
Johnny Hallyday
Josephine Baker
Julien Baer
Julien Clerc
Julien Ribot
Juliette
Juliette Greco
Julio Iglesias

【K】
Kaapi
Karin et Rebecca
Kaolin
Kate Ryan
Katerine
Kazuko Hohki
Kent
Keren Ann
  
【L】
La Fomule du Baron
La Grande Sophie
Ladytron
Laila France
Lara Fabian
Las Ketchup
Laurent Voulzy
Le Baron Oli Le Baron
Le Petit Prince
Le Tone
Le Trio Camara
Leo Ferre
Leonie
Les Calamites
Les Compagnons de la Chanson
Les Djins
Les Double Six
Les Elles
Les Enfoires
Les Freres Jacques
Les Gam's
Les Innocents
Les Jumelles
Les Matchbox
Les Milady's
Les Negresses Vertes
Les Nouvelles Polyphonies
Les Objets
Les Parisiennes
Les Petites Souris
Les Rita Mitsouko
Les Surfs
Lewis Furey
Liane Foly
Lilicub
Lily Margot
Line et Willy
Lio
Lisa Barel
Lizzy Mercier Descloux
Louis Aragon
Louis Philippe + Dany Manners
Louise Vertigo
Lucid Beausonge
Lucienne Boyer
Lucienne Delyle
Lydia Verkine
Lys Gauty

【M】
M
Magma
Magali Noel
Malcolm Mclaren
Malicorne
Mama Bea Tekielski
Mami Chan
Mano Negra
Marc Lavoine
Marc Ogeret
Marcel Amont
Marianne Faithfull
Marianne Mille
Marianne Oswald
Marie Antoinette
Marie Dubas
Marie France
Marie Laforet
Marie-Josee Neuville
Marie-Poule Bell
Maripol
Marjorie Noel
Marlene Dietrich
Mary Goes Round
Mary Roos
Martin Destree
Mathematiques Modernes
Mathieu Boogerts
Maurane
Maurice Chevalier
Maurice Fanon
Maxime Le Forestier
Megumi Satsu
Melissa Mars
Mellow
Michel Arnaud
Michel Berger
Michel Colombier
Michel Delpech
Michel Fugain & Le Big Bazar
Michel Jonasz
Michel Legrand
Michel Polnareff
Michel Sardou
Michele Arnaud
Michele Torr
Mickey 3D
Mikado
Miossec
Mireille Darc
Mireille Mathieu
Mistinguett
Monique Morelli
Mouloudji
Muriel Dacq
Mylene Farmer

【N】
Najiwa
Nana Mouskouri
Nancy Holloway
Nathalie
Niagala
Nico
Nicole Croisille
Nicole Rieu
Nicoletta
Nilda Fernandez
Nino Ferrer
Noir Desir

【O】
Orwell

【P】
Paris Combo
Pascal Comelade
Pascal Obispo
Pascale Borel
Patachou
Patricia Carli
Patricia Kaas
Patrick Bruel
Patrick Juvet
Patsy
Paul Mauriat
Pauline Ester
Petula Clark
Philippe Clay
Phoenix
Pia Colombo
Pierre Akendengue
Pierre Barouh
Pierre Henry
Pierre Porte
Plastic Bertrand
Plastiscines
Poppys
Pussy Cat

【Q】

【R】
Ramuntcho Matta
Raphael
Raymond Lefevre
Regine
Renaud
Ria Bartok
Richard Anthony
Richard Clayderman
Robert
Ronnie Bird
Rose

【S】
Sacha Distel
Salvatore Adamo
Sapho
Sara Mandiano
Sebastien Tellier
Serge Gainsbourg
Serge Lama
Serge Reggiani
Severine
Sheila
Simome Signoret
Sinclair
Snooze
Soeur Sourire
Sophie
St Germain
Stella
Stinky Toys
Stone
Stone et Charden
Suzy Solidor
Swingle Singers
Sylvia Kristel
Sylvie Vartan

【T】
Tahiti 80
Taxi Girl
Telephone
Telepopmusik
Telex
The Little Rabbits
Thomas Fersen
Tino Rossi
Tiny Yong

【U】
Ute Lemper

【V】
Valerie Lagrange
Valerie Lemercier
Vanessa Daou
Vanessa Paradis
Veronique Jannot
Veronique Sanson
Viktor Lazlo
Vicky Leandros

【W】
Wapassou

【X】

【Y】
Yann Tiersen
Yannick
Yves Duteil
Yves Montand
Yves Simon
Yvette Giraud

【Z】
Zanini
Zazie
Zizi Jeanmaire
Zouzou